燃料界の救世主か? 『バイオエネルギー』

お盆休みに熊本の阿蘇へドライブに行きました。今年の夏は猛暑でしたが、さすがに、標高約1,500mの阿蘇山は、麓よりも5℃くらいは低かったのではないかと思います。
周りには鮮やかな緑の草原が広がっており、おいしい空気を吸うために窓を全開にして、気持ちよく走っていました。酷暑の街中とは別世界です。連休ということもあり交通量も少なくありませんでした。ところが、すれ違うどの車を見ても窓を開けていません。勿体ないなぁ、せっかくの阿蘇山なのにと思いながらも、今年の夏はなんでこれほど暑いのだろうかと、実感として地球温暖化という言葉を思い起こしました。

日本は、1997年に締結された国際条約「京都議定書」において2008〜2012年(第一約束期間)には1990年との対比で「温室効果ガス」の排出量を6%削減することとしています。
地球温暖化の原因とされる大気中の「温室効果ガス」のうち、最も量が多いものが燃料の燃焼や生物の呼吸によって大気中に排出される二酸化炭素です。「京都議定書」では、植物を原料とするバイオ燃料を燃焼させた場合には、次の世代の植物が光合成によってそれを吸収して育つため、大気中の二酸化炭素の総量を増加させないという考え方(カーボンニュートラル効果)により、バイオ燃料の燃焼によって排出された二酸化炭素を温室効果ガス排出量として計上しないことにしています。つまり、プラスマイナスゼロというわけです。

石油業界は、それを受けて、2007年4月27日(金)から首都圏の給油所において、バイオETBEを配合したレギュラーガソリン「バイオガソリン(バイオETBE配合)」を販売しています。
このように、バイオ、バイオと、よく聞きますが、一体何でしょう?
バイオ燃料とは、植物生まれの自動車用燃料のことです。
バイオETBE(エチル・ターシャリーブチル・エーテル)とは、トウモロコシサトウキビなどの植物や建設廃木材等から生産されるバイオエタノールと、石油系のガス(イソブテン)を合成して作られたものです。
そして、一般的に使用しているガソリンとバイオETBEとを混ぜてできるのがバイオガソリンです。 このガソリンとの混合割合によってE10、E50と呼び、バイオETBE100%で使用される場合はE100と呼びます。日本では現在、販売用のガソリンに混合できるバイオETBEの割合は法律で3%までとなっています。また、7%程度まで混合しても自動車の性能に影響がないことが確認されています。このバイオガソリンは、JIS及び品質確保法の規格に合致しているので、従来のレギュラーガソリンと全く同じ使い方ができます。

これに対し、大豆(主にアメリカ)、菜種・ひまわり(主にヨーロッパ)、パーム(東南アジア)、廃食用油(日本)などの植物性油をメタノールと反応させメチルエステル化したものをバイオディーゼル(BDF)と呼んでおり、これを軽油と混ぜてできるのが軽油の代替燃料となるバイオ燃料です。廃食用油も利用できるため、環境汚染防止にも役立ちます。

バイオエタノールと同様、軽油との混合割合によってB10、B50と呼びます。実際に使用する場合、バイオディーゼルの混合率が20%(B20)以下であれば、既存の車両の仕様変更や部品交換等を行う必要がなく、通常の燃料として問題なく使用することが可能です。燃費は、軽油と比べると若干劣るものの、ほぼ同等と考えられているようです。

このように植物を原料として作られるバイオ燃料は、環境にやさしい夢のエネルギーとして期待されているのです。特に最近の原油高で、いっそう注目度はあがっているようです。(ただし、現段階では、レギュラーガソリン、軽油それぞれとほぼ同価格に設定されています。)
素人の考えでは、とてもいいことのように思えるのですが、現実はなかなか難しい問題を含んでいることも注意しなければならないようです。
バイオ燃料ブームはトウモロコシや大豆の価格を高騰させ、休閑地まで耕作され土壌に蓄積されている二酸化炭素が大気中に放出されるのではないか、あるいは食料としての農産物の供給を圧迫すると言う問題、栽培には大量の除草剤と窒素肥料が使われ環境に良い影響を与えない、何よりもエタノールを生産する工程で、それによって得られるものと大差ない量の化石燃料が必要となるなどと指摘がされている点です。
私たちは、そうした問題点を克服する高度な技術が開発され、地球温暖化防止という人類にとって最重要課題が解決されることを願うほかないのです。日本でも、これからというのが現状で、完全に原油に頼らず、E100、B100を燃料として使えるようになるのは、まだまだ先のようです。 技術の進歩を待つばかりでなく、例えば「エアコン」麻痺にならないなど、ほんの少しの心がけで環境にやさしくできることは幾らでもあるのですから、一人一人の二酸化炭素を減らす意識と行動が温暖化対策に繋がるのだと改めて感じました。